<レアアース>中国規制せず…日本の調達先分散で効果薄れ

<レアアース>中国規制せず…日本の調達先分散で効果薄れ

家電製品やエコカーなどの素材として重要な資源である「レアアース」。日本への最大の供給元の中国は、10年の沖縄県・尖閣諸島沖漁船衝突事件で、対抗措置として対日輸出を規制したが、今回はレアアースというカードを切っていない。中国は00年代に世界の供給量の大半を握っていたが、大口需要家の日本企業などが代替品の開発や調達先の分散を進めた結果、需給バランスが変化し、輸出が減少したことが背景にある。今後の中国の対応が注目される。

  ◇尖閣対応、2年前と変化

日本はレアアースの調達先の多様化を進めた結果、中国への依存度は確実に低下している。輸入に占める中国産の割合は10年に8割超だったが、今年1~6月は5割を切った。代替品の活用などで全体の輸入量も減っており、今年1~6月は一昨年の半分以下。中国の輸出規制で昨年夏に急騰した価格も、今年夏にはピークから7割程度低下した。

日本の残る課題はレアアースの中でも希少性が高い「重希土類」と呼ばれる分野の確保だ。なかでもハイブリッド車(HV)などに使われる「ジスプロシウム」は今も圧倒的に生産量の多い中国産に9割超を頼る。ジスプロシウムについても住友商事がカザフスタンでウラン採掘の残存物から回収する事業に着手したほか、三菱マテリアルがHVの廃車からの回収を始める方針だが、本格的な調達には時間がかかりそうだ。

一方、中国政府は8月22日、レアアースの輸出枠を前年比約2・7%増やすと発表した。しかし中国メディアによると、11年の輸出実績は輸出枠の6割程度にとどまる。今年1~6月も前年同期比で約4割減少しており、実際には輸出枠に余裕がある。日米と欧州連合(EU)が今年6月、中国がレアアースに輸出枠を設定するのは世界貿易機関(WTO)協定に違反しているとして、中国をWTOに提訴しており、輸出枠拡大はこれらの国際的な批判をかわす狙いがあると見られている。

さらに中国政府はレアアース業界の管理強化を進めている。今年4月に業界団体を設立したほか、8月6日には採掘・精錬事業への参入規制を発表。資本規模などをクリアできない約3分の1の採掘企業と、約半分の精錬企業が整理される見込みだ。また、9月13日には、レアアースの試掘権・採掘権リストを公表。採掘権の発行数を113件から67件に大幅に減らした。採掘・精錬を大手企業に集約することで政府が生産量を調整し、戦略物資としてレアアースをコントロールする考えのようだ。

  ◇レアアース(希土類)◇

流通量が少ないレアメタル(希少金属)の一種で、ジスプロシウムやネオジムなど性質の近い17種類の金属元素の総称。日本企業が技術的優位性を持つハイテク製品に多用している。世界の広範囲に分布する「軽希土類」と偏在性の高い「重希土類」に大別される。軽希土類は研磨剤や触媒、蛍光体などに使われ、各地で開発が進めば供給源の多様化につながるとされる。だがハイブリッド車のモーターなどの高性能磁石に使用する重希土類は偏在性が高く、現時点で十分に生産できる量が確認されているのは中国だけ。日本政府は中国の輸出規制を懸念し、代替素材開発を進める企業などに補助金を交付するなど使用量削減に向けた動きを加速させている。                                                   YAHOOニュース より抜粋